日本人の「現金主義」は変わるのか
日本は先進国の中でキャッシュレス化が遅れています。
日本人のクレジットカードや電子マネーの保有率は高いものの、現金主義が強く現金を持ち歩かない人が少ないです。
ネット通販ではカード決済をするけど、コンビニやスーパーでは現金払いを利用する人が多く、電子マネーは交通系電子マネーとして公共交通機関の利用だけという方が多いです。電子マネーを扱う店舗が増えていますが、電子マネー利用者の多くは現金でのチャージを行っています。
日本人の現金主義は治安の良さが影響しています。
ひったくりや窃盗、強盗被害が世界の中でも飛び抜けて少なく、数万円以上の現金を持ち歩くのは社会人なら当たり前のことになっています。
現金を持つ歩く抵抗がなければ、キャッシュレス決済を利用できない店舗のことを考えたり、友人知人との飲食時に割り勘で支払うことを考えて現金を持たない行為は不便で非常識だと扱われてしまいます。
たとえば飲み会の時に現金を持って行かなかったとしたら、周囲からは「ケチ」と思われます。
個人間の送金サービスを使って、自分の分を払うといっても、受け取る側が送金サービスを使っていなかったり、現金以外でお金を受け取るのを嫌がるものです。
現金決済の需要があるため、老舗業者はキャッシュレス決済に対応しないで運営を続けるなど悪循環に陥っています。
現在もラーメン屋や床屋など現金以外の支払いを受け付けしないのが当たり前の業種が多数あります。
国内でもネット通販や、格安SIM、ネットプロバイダなどカード決済限定サービスの普及でクレジットカード保有率が高まったり、交通系ICカードの普及で電子マネーの普及率が高まっています。
しかし、キャッシュレス決済だけに依存できる環境ではなく、現金を併用しないと生活が不便に感じる状況です。
キャッシュレス先進国のスウェーデンの場合は現金決済に対応できない飲食店や小売店が増えていて、日本に大きな差をつけています。
政府がキャッシュレス化を推進
政府がキャッシュレス化を本格的に進めようと動き出しました。
2018年8月には経済産業省がキャッシュレス化決済80%を目指す目標を打ち出し、小売店に対し税制優遇を検討していることを明らかにしました。
スマホで読み取るQRコードを使った決済基盤を提供する事業者に補助金を供与し、中小の小売店には決済額に応じて時限的な税制優遇を検討するものです。
つまりカード決済ではなく、スマホのQR決済に限定して優遇措置を取るものです。
LINEやYahoo!などの大手もQRコード決済普及のために、3年間限定で手数料ゼロ施策を打ち出してキャッシュレス化を後押ししています。
しかし、この政府が打ち出すキャッシュレス化の効果は限定的だと予想します。
現時点では、全国の小売店が現金よりもQR決済をすることで割引を用意する可能性は低く、QR決済に対応する業者数を増やすためのものです。
小銭を扱うことを嫌う人から一定の需要はありますが、キャッシュレス決済80%の目標を達成するには、これだけでは弱いです。
現時点で多くの小売点がクレジットカード決済に対応しています。
一部のTAXを取る高級店を除き、大衆向けのお店は現金と同じ金額でカード決済に対応し、利用者はクレジットカードのポイント還元を受ける分だけお得に使える環境があります。
クレジットカード決済の対応力が高くても現金主義の残る環境になっているので、QR決済できる環境が増えるだけでキャッシュレス化決済の普及率が高まるとは考えられません。
もちろん、政府もある程度の予測を出して、QR決済の補助金や優遇措置で終わらせるつもりはないでしょう。
現時点では、QR決済普及に向けた補助も検討段階のものです。政府の推進するキャッシュレス化で大きな効果を得るには、現金決済やATMから現金を引き出すことに手数料を徴収するなど、現金に比べて明確なお得感を出すことが必要です。
クレジットカードのポイント還元があっても店頭決済でのキャッシュレス普及率は限定的です。
海外のキャッシュレス先進国に勝つには、キャッシュレス決済にすることで割引を受けたり、現金決済不可で格安提供する店舗を増やす必要があります。
日本は海外に比べて現金を持ち歩いたり支払いをするセキュリティ面の不安が少ないので、大胆な改革をしないと現金主義は変わらないでしょう。