投資もAIが行う時代へ
すでにAIアルゴリズムによる自動売買の投資は実用化されています。
投資はコンピューター化やAI化がいち早く普及した分野で、昨今はベテランのプロディーラーでも、最新のAIアルゴリズムに勝つのが難しくなっています。
銀行の投資部門でもAI化が進んでいき、将来的にはごく少人数での運用になると予想されています。
ゴールドマンサックスの事例
AIの進化によって多くのディーラー(機関投資家のトレーダー)が職を失っています。
代表事例がアメリカに拠点を置く世界最大級の投資会社「ゴールドマンサックス」です。
全盛期には約650名のトレーダーが在籍していましたが、現在は3名ほどしかいません。
その代わりにAIシステムを開発するためのエンジニアを4,000名雇っています。
それでは、かつて在籍していたトレーダーはどうなったのでしょうか?
一部で部署異動で残っているスタッフもいますが、大半は世界のヘッジファンド等に転職しました。
ゴールドマンサックスで活躍していたキャリアを高く評価され、新しい働き口を探すのは簡単なことでした。
しかし、ゴールドマンサックスの元ディーラーが移籍したヘッジファンドがこぞって苦戦をしています。
最新のAI投資は、ヘッジファンドなど機関投資家の手法や傾向も分析した自動取引をしています。
かつては株式での高速アルゴリズム取引によって個人投資家の資金を吸い取ったように、最近はAIが人力による古い手法を使っている機関投資家をターゲットにしています。
元ゴールドマンサックスのスタッフを受け入れたヘッジファンドが苦戦しているのとは対象的に、人の手をほとんど使わないゴールドマンサックスは好調です。
日本でもゴールドマンサックスのAI投資信託に人気が集まり、当初の予想を上回り2017年10月時点で1,100億円の運用資金を集めています。
ゴールドマンサックスの成功事例を見ると、今後は銀行や国内の大手証券会社、生命保険や年金の運用部門などあらゆるディーラー職がAIに奪われていくと予想します。
超高速アルゴニズムとAIアルゴリズム
国内におけるアルゴリズム取引は、2010年に東京証券取引所がアローヘッドを導入してから普及しました。
アローヘッドは高速注文を受付するシステムで、従来は売買注文1件あたり2~3秒かかっていたところを0.005秒程度まで短縮しました。
高速注文が可能になったことで機関投資家はコンピューターを使った自動取引を行い、事前に設定したアルゴリズムによって短期間の売買を繰り返して利益を出していきました。
アルゴリズムにもいくつかの手法がありますが、一般的には人間心理を利用したプログラミングをして、見せ板(嘘の注文)を出したり、提灯買い(大量注文入れると個人もつられて買うこと)などを意図的に作り出して、利益を積み上げています。
登場した当初のアルゴリズムは粗くて、個人のデイトレーダーはアルゴリズムを相手に利益を出していたものの、次第にシステムが改善されて個人では太刀打ちできないアルゴリズムへと進化していきました。
アルゴリズムが進化したのは、人の手によってプログラミングの書き換えを繰り返したことです。
株やFXなどの投資におけるアルゴリズム取引は、この条件になった時の取引成功率○○%など、数字による分析が中心です。
AIとの相性がよく、既存のアルゴリズムの調整を人よりもAIがやった方が優秀なアルゴリズムになるというものです。
ある程度のシステム基盤ができれば、あとは調整や修正を含めて全てAI任せにすることで市場や傾向の変化にも臨機応変に対応しながら良好な成績を続けられるのがAIアルゴリズムです。
個人投資家向けツールでもAIシステムが普及中
現在は個人投資家でも手軽に利用や運用のできるAIシステムが多数あります。
AIの全てが優秀なワケではなく、まだ成長段階のものや、元のシステムが弱いものがあります。
つまり、AI投資にも強いものと弱いものがあり、現時点では個人向けツールは機関投資家向けのAIシステムに劣っています。
それでも、少額運用ならではの投資を得意にしているものなどもあり、利用する価値の高いツールです。
将来的には手動で売買注文を出す投資家がいなくなって、AI運用が中心の時代になるかもしれません。
「個人投資家のAI VS 機関投資家のAI」という構図になれば、当然機関投資家の方が強いシステムを作って対抗することが予想されます。
しかし、フィンテックによって最新技術を幅広い方が共有できる時代に変化しているので、個人や機関投資家など資金力や規模による優劣の差が今後は少なくなっていくかもしれません。